【本】『ホームレス中学生』 田村裕著
2008.08.07(Thu)


…解散!!。



ホームレス中学生ホームレス中学生
(2007/08/31)
麒麟・田村裕

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お笑いコンビ「麒麟」の向かって左側、田村裕の自伝。
中学2年生の時、父親の事情で自宅が差し押さえられ、「家が無くなった」田村は、
兄姉とも別れ、一人近所の公園で暮らすことにします―。

公園でホームレス暮らしをしていた時の描写、
その後の中学・高校生活と卒業、吉本興行のお笑いタレント養成所入りと、
早くに亡くした母親への想いが描かれています。

文章は拙いですし、
目玉?のホームレス生活も意外と短くてあっさり。
なぜこれがベストセラーになったのかが、よく分かりませんでした。

ただ、田村裕という人の人柄の良さは伝わってきました。
自分にホームレス生活をさせ、兄と姉にも苦労をかけさせた父親に対して恨むことなく、
逆に父親をもっと助けてあげればよかったと書いています。
また、亡き母親が常に田村の心の中にいて、彼を支えていることもよく分かりました。

結局ベストセラーとなったのは、
ほんの10数年前に中学生がホームレス生活をしていたということへの驚きと関心、
どんな生活だったのかへの興味、が第一。

更にそれに加えて、
主人公が逆境に置かれても陽気で前向きであることと、
常に周囲の人達へ感謝を忘れない姿が、
“子供に読ませる本”としても人気が出たからかなと思いました。
また、人にはいろいろな事情があるのだよ、ということを教えるのにもいいかもしれません。

苦難の状態になっても、他の誰かに怒りをぶつけることなく、
自力で、それも楽しげに何とかしようとする姿は、
確かに読んでいて好感を持てました。

こういう性格だからこそ、良い人達に恵まれたのでしょう。
この辺は見習いたいなと思いました。
【本】『ぜつぼう』 本谷有希子著
2008.07.09(Wed)


俺の苦しみは本当だ。



ぜつぼうぜつぼう
(2006/04/28)
本谷 有希子

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主人公はかつて国民的人気者となったお笑い芸人、戸越。
ブームが去ると共に、手の平を返したような態度を取った仕事仲間や関係者達。
街に出れば顔は忘れられておらず、
帽子で隠せば「まだ人気があると思ってるの?」と一般人に嘲笑われる始末。
人間不信に陥り、引き篭もり状態の戸越の前に、
復讐させてやるからそれまで自分の家に住んでいろ、という中年男性が現れます。
向かった家は田舎の汚い一軒家。そしてそこにはひとりの女性が―。

主人公の絶望感の描写が、非常にリアルだと思いました。
変にプライドが高かったり、自意識過剰気味だったりするところなど。
現代の若者の心理が生々しく伝わってきました。

自分は本当に絶望しているのだと、
分かってもらおうとする辺りの心理描写は秀逸だと思いました。
そして、再生し始めるシーンも。

純文学ほど重すぎず、ライトノベルのように軽すぎないという匙加減も良かったです。
いや良かったですどころか、そこが大変魅力的だと思いました。
「今」を書くことの出来る作家、かな。
他の作品も読んでみたいです。
【本】『ハイドラ』 金原ひとみ著
2007.12.19(Wed)


奴隷でいる苦しみと悦び。


ハイドラハイドラ
(2007/04)
金原 ひとみ

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写真家の専属モデルであると同時に、恋人でもある20代の女性が主人公。
35kgという体重を維持することに固執するのは、恋人に捨てられないため。
そのために食べても噛むだけで飲み込まずに吐き出す、という行為を続けています。

何もかも恋人を優先した奴隷のような生活を送りつつ、
そんな自分に疑問を抱いてもいる。
そこに登場するのが明るい理想主義者の男性ミュージシャン。
溢れんばかりの愛情で、主人公を“救出”しようと試みます。
その明るさと純粋さを危なっかしいと感じつつも、
信じてみようとする主人公でしたが―。

読んでいてとても違和感を感じたのが、
主人公があまりにも相手に依存していること。
物事を冷静に考える力を持っているだけに、
どうして自分を放棄してしまうのか不思議でした。

でも自分で何も考えないで相手にすべてを任せてしまうというのは、
ある意味とても楽だし、暗い悦びにすらなるのですよね。
その辺りの感情や、
「愛がすべてさ」という感じのミュージシャンを胡散臭く感じる部分もリアルで、
良かったです。

両極端な男性2人の間で主人公がどういう選択をするのかがラストですが、
むー、そうするの?というのが正直な感想。
他に選択肢があると思うのだけれど。

今までより落ち着いた文章といい、
著者はこれまでは馬鹿にしていた普通の生活も良いなと思い始めたのではないかと。
それでもやはり、今までの馴染んだ毛布からは出られなかった、という印象でした。

日本人作家はあまり読みませんが、
この著者の作品は結構読んでいます。
今時の若い女の子なのに、
物事を冷静かつ真面目に考えているところが私の年代でも読める点なのかも。
【本】『村上かるた うさぎおいしーフランス人』 村上春樹
2007.12.03(Mon)


ぜんぜん世の中のためにならないものって、ときどきは必要ですよね(と同意を求める)。ですよね?








村上春樹版「犬棒かるた」です。

ご本人曰く、脳内に

「まったく世の中のためにはならないけれど、ときどき向こうから勝手に吹き出してくる、あまり知的とは言いがたい種類のへんてこな何か」


 が眠っているそうで、それを放出しておかないと、脳内バランスが崩れてしまうそうです。

常にお洒落でハイセンスと言われるのも辛いのでしょうね。
最近は社会派になりつつありますし。

というわけで内容は、
右ページに「あ」から始まるかるたの文章、
左ページに安西水丸のカラーかるたイラスト、
その後にかるた文章から展開する短いエッセイというのか短篇というのかが続く、
という形式になっています。

一巡した後、モノクロミニサイズでもう一巡のおまけが付いています。

あえて言っておきますと、
お洒落な村上春樹が好きな人は、読んではいけません。

でもぼへーっとしている時の村上さんの脳内が知りたいわ、という人にはよろしいかと。
お洒落な村上さんの普段の姿が垣間見られます。
へえ、日本のプロ野球を見ているんだ、とか、
叶姉妹を知っているのね、とか、
ジュリア・ロバーツやレオナルド・ディカプリオのような、
ベタなハリウッドスターもチェックしているのね、とか、
下ネタだけでなくホモネタも書けるのね、とか。
年相応にオヤジなのね、とか。

お馴染みのジャズミュージシャン達や、
ジミヘン、キンクス、ストーンズにビートルズも登場します。

センスが良く、お洒落な文章を書く謎めいた小説家の、
へんてこな部分を見ることが出来た点が一番面白かったですね。


…でも私の敬愛するビル・エヴァンズをあんな風にしたのは許せないわ。
【本】『風に舞いあがるビニールシート』 森絵都著
2007.11.20(Tue)


ビニールシートが風に舞う。



風に舞いあがるビニールシート風に舞いあがるビニールシート
(2006/05)
森 絵都

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『器をさがして』『犬の散歩』『守護神』『鐘の音』『ジェネレーションX』と、
『風に舞いあがるビニールシート』の5作品が収録されています。

『器をさがして』は、人気パティシエのマネージャーを務める女性が、
自分の仕事と恋愛について考える話。
『犬の散歩』は、捨て犬を里子に出すボランティアをする主婦が社会貢献について考える話。
『守護神』は、レポート代筆の達人に依頼に行く社会人男性大学生の話。
『鐘の音』は、仏像修復師の青年の挫折とそこから得たものの話。
『ジェネレーションX』は、客に謝罪に出かける40代と20代の会社員の話。
『風に舞いあがるビニールシート』は、国連難民高等弁務官事務所勤務で、
世界各国の難民のいる危険な地域を渡り歩く上司と結婚した日本人女性の話。

どの作品にも共通しているのは、
逡巡したり苦しんだりした挙句、一歩踏み出す人の話だということ。

直木賞を受賞したのが表題作『風に舞いあがるビニールシート』ですが、
この作品には私はあまり魅力を感じませんでした。
国連難民高等弁務官事務所という馴染みのない世界の人が主人公というせいか、
現実味が薄く感じてしまいました。
“ビニールシート”が表していることも、取って付けたような印象でした。

逆にいいなと思ったのが、『ジェネレーションX』です。
携帯で話している内容から話が膨らんでいく、というのが目新しかったです。
ジュブナイル小説っぽい点と、落語のようなオチが多少鼻につきますが、
読後感が爽やかで好感を持ちました。

この著者の作品は初めて読んだのですが、
どの作品もどこかで読んだようなものばかりで、
この人なりの特徴というものが掴めませんでした。

またこの著者の名前を見かけた時に本を手に取るかは、微妙なところです。