【本】『夏の涯ての島』 イアン・R・マクラウド著
2008.03.23(Sun)


そう、わたしはチョップ・ガールだった―と言っても今ではわかってくれる人もいないだろう。



夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ) (プラチナ・ファンタジイ)夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ) (プラチナ・ファンタジイ)
(2008/01/09)
イアン R.マクラウド

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英国人作家イアン・R・マクラウドの、
初の邦訳本であり、日本で独自に編集された短篇集です。
7つの短篇が収められています。

『帰還』
『わが家のサッカーボール』
『チョップ・ガール』
『ドレイクの方程式に新しい光を』
『夏の涯ての島』
『転落のイザベル』
『息吹き苔』

はじめの3作品は古き佳きSF作品といったところ。
『ドレイク…』から次第に叙情的になっていき、舞台設定も凝るようになります。
この舞台設定がどうにも分かりづらくて、私には読みにくかったです。

印象に残ったのは、『チョップ・ガール』と『夏の涯ての島』。

『チョップ・ガール』は、
第二次世界大戦下の英国空軍基地で働く若い女性が主人公。
チョップ・ガール(=人殺し女)と呼ばれるようになった彼女の前に、
幸運の権化のような青年兵士が現れて―、という内容。
これはコンパクトながらよく出来ていて、読後感も良かったです。
2000年世界幻想文学大賞、アシモフ誌読者賞受賞作品。

『夏の涯ての島』は、
1940年にドイツに戦争で敗れたイギリスが舞台。
歴史を改変したものなのですが、歴史改変小説、というジャンルがあるのですね。
初めて知りました。
そんなイギリスでカリスマ指導者となっている人物と、
その人物と関わりのある男性が主人公。
年老いた主人公が過去を振り返ります。
1999年世界幻想文学大賞、サイドワイズ賞(歴史改変小説に与えられる賞)受賞作品。

『わが家のサッカーボール』も、
父が犬、母が人間で兄妹の人種が違うという、
ソフトバンクの携帯電話のTVCMのようで面白かったです。
ちょっとオチがひどいけれど。

3作品目以降が非常に読みづらくて参りました。
長いのですよ、何もかもが。長いのに惹き込まれないので目が滑るという感じ。
個人的にはもうひとつ、でした。
【本】『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 フィリップ・K・ディック著
2007.02.06(Tue)
「普通なら彼女(ハー)というはずだ。」

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
浅倉 久志、フィリップ・K・ディック 他 (1977/03)
早川書房

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映画「ブレードランナー」の原作として知られる作品。
映画がとても印象に残っていたので、
この作品を読む時にも当然映画のことが頭にありました。

ところが読んでみると、
映画とはかなり内容が違うことに驚きました。

舞台は核戦争後の廃墟と化した地球。
ほとんどの人々が他の惑星に移住している中、
一握りの人間達だけが放射能を含んだ灰に降られながら生きています。

主人公はアンドロイド専門のバウンティーハンター(賞金稼ぎ)。
地球では贅沢品となっている本物の動物を飼うために、
新たな仕事を引き受けます。
それは地球に逃亡してきた8人の高性能アンドロイドを始末すること―。

目的のアンドロイドとの対決は素直に面白いです。
1人1人消していく、というシンプルさも読みやすいですし。

ただ、この主要ストーリーに絡んでくる様々なエピソードに、
いろいろと考えさせられました。

人間とは何なのか―。



映画は映画でよく出来ていたように記憶しています。
ラストが全く違うこともあって、
また改めて見てみたくなりました。

ブレードランナー 最終版 ブレードランナー 最終版
ハリソン・フォード (2002/07/05)
ワーナー・ホーム・ビデオ

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ルトガー・ハウアーの名演技が有名。
ダリル・ハンナやショーン・ヤングも出演しています。
主役はハリソン・フォードです。
【本】『天のろくろ』 アーシュラ・K.ル=グウィン著
2007.01.09(Tue)
「心は毎朝眠りからさめて、いったいどうすればいいのだろう?」

天のろくろ
天のろくろ
posted with 簡単リンクくん at 2007. 1. 8
アーシュラ・K.ル=グウィン著 / 脇 明子訳
ブッキング (2006.4)
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夢をテーマにした小説というのは色々あると思うけれど、
この本の夢の扱い方がなかなか目新しかった。

普通の「夢ネタ」の場合、
夢見たことが現実になる、ということが多いと思う。
でもこの作品では、夢見たことが現実になる上、
現実化した現実に合わせて過去も変わってしまうのだ。

そんな現実化する夢を見てしまう主人公オア。
現実化する以前の世界の記憶も持ち合わせるため、
もはや夢見ることに耐えられず、薬に手を出す。
そして紹介された精神病医ヘイバーは、
オアの能力を利用して、自らの理想を実現しようとする。

自分の頭の中で創り上げた理想世界の実現に固執するヘイバーと、
「手で触ることが出来る」=実体験することの大切さを知るオアは、
法律家ルラッシュと共にヘイバーと対決していくことになる―、
というのが主なストーリー。

正直に言って読みづらかった。
夢が現実化した現在を、
さらに夢で訂正していくことの繰り返しで、ややこしいことこの上ない。

それでもダークで幻想的な雰囲気は魅力的だった。
特に主人公と恋仲になるルラッシュが、
夢が現実化する瞬間を目の当たりにする場面、
目の前で都市が崩れ去っていくのを見るシーンがとても印象的だった。

夢を見るなら頭の中だけで創り上げたものではなく、
実際に経験して本当に必要で必要とされる夢を見よう。
【本】『ページをめくれば』 ゼナ・ヘンダースン著
2006.11.05(Sun)
教師と子供と宇宙人。

ページをめくれば ページをめくれば
ゼナ・ヘンダースン (2006/02/21)
河出書房新社

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表題作を含めて全部で11の短篇が収録されている。日本独自の短篇集。
著者は1917年生まれの米国人女性で、教職を続けながらSF小説の執筆をした。

すべての短篇に共通するのは、「大人と子供」。
相容れない二つの世代の間に常に生まれるギャップから、著者は空想を広げている。

完全なパラレル世界を描くのではなく、
日常生活に奇想天外なシチュエーションが入り込み、
それが違和感なく溶け込んでいるあたりは、シオドア・スタージョン風味。
しかし、物語の主張や描写はとても女性的、
それも50年代アメリカの白人中産階級女性そのもので、
読んでいて甘ったるいなと感じるところが多々あった。

教師の経験からか、教師と生徒の話が多かった。
作品全体を通して印象に残ったものも、
生徒の言葉からその生徒の家庭の実態が次第に分かってくる『先生、知ってる?』、
魔法使いの担任教師から教わったことの余韻が伝わってくる『ページをめくれば』、
の教師と生徒モノの2作品だった。

大人と子供、異人種間の対立を前向きに考える内容と、
逆に考える内容とが収録されている。
教師だった著者の心の内が分かるようだった。

普段SF小説は読まないという女性の、最初の1冊向きの本。
【本】『闇の左手』 アーシュラ・K・ル・グィン著
2006.09.28(Thu)
辺境の星にたった一人降り立った使節。

闇の左手
闇の左手
posted with 簡単リンクくん at 2006. 9.28
アーシュラ・K・ル・グィン著 / 小尾 芙佐訳
早川書房 (1995.3)
通常2-3日以内に発送します。


雪と氷に閉ざされた辺境の惑星ゲセン。
惑星<冬>と呼ばれるこの星の住民達は両性具有であり、
特異な社会を形成している。

この星と外交関係をひらくべきただ一人やって来たのが、
人類同盟エクーメンの使節、ゲンリー・アイ。
彼はまずカルハイド王国を訪れるが―。

著者ル=グウィンの創り上げた世界で話は展開していく。
基本的なストーリーは、
先進国からやってきた使節が辺境の星で使命を果たせるか、というもの。
しかし著者が重きを置いているのはストーリーよりも、国やその住民達の描写だ。

王政のカルハイド、社会主義のオルゴレイン。
国の違いによる人柄や思想の違い。
両性具有の人間と一つの性しか持たないゲイリー。
その他にも宗教、性、異国人同士の交流など、
それは細かく描写されており、その創作力には驚かされてしまった。

スーパーヒーローではなく、
過酷な体験から成長していくゲイリーの姿は『ゲド戦記』を思わせるし、
異国の文化の描写をすることで地球人としての私達に何かを考えさせるという点では、
『なつかしく謎めいて』を思い起こさせた。

正直なところ、話に入っていくのは難しかった。
著者にとっては確立した世界なのだが、私には最後までピンとくることはなかった。
胸躍るSF小説ではなく、じっくりと読みたいファンタジー作品。

1970年ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞作品


ゲド戦記 全6冊セット ゲド戦記 全6冊セット
アーシュラ・K・ル=グウィン (2006/05/11)
岩波書店

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なつかしく謎めいて なつかしく謎めいて
アーシュラ・K. ル=グウィン (2005/11)
河出書房新社

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ユリイカ 2006年8月臨時増刊号 アーシュラ・K・ル=グウィン ユリイカ 2006年8月臨時増刊号 アーシュラ・K・ル=グウィン
(2006/08)
青土社

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