【本】『追憶の夏 水面にて』 H・M・ヴァン・デン・ブリンク著
2006.06.01(Thu)
1938年。内気な少年はボートに出会った。

追憶の夏 水面にて 追憶の夏 水面にて
H.M.ヴァン・デン ブリンク (2005/12)
扶桑社

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オランダの運河に囲まれた街で育った主人公。
水の美しさを見て育った「ぼく」は、街のボートクラブに参加する。

そのクラブにやってきたドイツ人コーチに、
花形2人乗りボートの選手として、
優秀なダーヴィットと「ぼく」が選ばれる―。

主人公の一人称で語られていくが、
内気で大人しい性格を反映した、
とても静かな語り口で話は進んでいく。

ボートの競技会や練習の描写がとても詳しく、
読んでいると自分がやっているような錯覚を覚えるほど。

特にボートに乗っている時に眺められる風景の描写が美しく、
主人公の心境と上手く絡められているのでとても印象に残る。

労働階級出身で狭い世界しか知らなかった主人公が、
ボートと、上流階級出身のダーヴィット、
外国出身のコーチとの触れ合いの中で、
成長していく姿が甘酸っぱくまた清々しい。

そんな爽やかな少年の成長物語だが、
戦争の暗い影が差し込んでおり、切ない結末が暗示されている。
その暗さが、
主人公の美しい夏の記憶を鮮明にさせている。

川の水面のように静かでありながらきらきらと光る、
良い小説だった。