【本】『スローターハウス5』 カート・ヴォネガット・ジュニア著
2006.08.10(Thu)
人間とは…、そういうものだ。スローターハウス5 / カート・ヴォネガット・ジュニア

作中の主人公が書いた小説という形になっている。
その作中小説の主人公が、ビリー・ピルグリム。
ビリーは、自分の人生の過去と未来に意図せず飛んでいってしまう、
<けいれん的時間旅行者>。
そんなビリーの視点で、話は進んでいく。
子供時代から、
第二次世界大戦に従軍した青年期、
富豪の娘との結婚生活、
トラルファマドール星で見世物にされる、
晩年期…。
これらビリーの生涯の、
過去と未来とを行きつ戻りつしながらの展開だが、
読んでいて混乱することはない。
未来が分かっているビリーの視点なので、
登場人物達がどうなるのかは、登場時点で分かっている。
ああいう死を迎えることを知らずに生きている登場人物達―。
人間とは何と愚かで哀れな生き物なのだろう…と、
自分も含めて思わずにはいられなかった。
著者自身が実際に第二次世界大戦に従軍し、
ドイツでドイツ軍の捕虜となり、
さらに連合軍によるドレスデン無差別爆撃を経験している。
この体験が著者に大きな影響を与えているであろうことは、
想像に難くない。
戦争を始める人間、
味方すら爆撃する人間、
その無差別爆撃を隠し続けた人間…。
何と愚かな生き物。
しかし著者は声高に人間の愚かさを責めることはせず、
「そういうものだ」
とただ何度も呟くのみ。
作品全体を通して、
著者の人間に対する皮肉と温かな目と、愛情がこもっている。
そんな著者の視点がとてもチャーミングで、
私はとても好きだと思った。
★「VONNEGUT.com」オフィシャルホームページ(英語)
http://www.vonnegut.com/
ここを見たら、どんな作風か分かって頂けるかも。
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