【本】『生きる歓び』 橋本治著
2006.12.13(Wed)
「なんのへんてつもない日常の中にあるものこそが「物語」なのだ。」

生きる歓び 生きる歓び
橋本 治 (2001/02)
角川書店

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「にしん」「みかん」「あんぱん」「いんかん」「どかん」
「にんじん」「きりん」「みしん」「ひまん」
というタイトルの9つの短篇が収められている。

どの作品もそれぞれ様々な年齢や職業の「普通の人」が主人公になっているが、
本全体を通して共通している点がある。それは、

「あきらめの美しさと静けさ」。

どの主人公も自分の現状に対して不満を持っているのだが、
最終的にはその不満をあきらめと共に受け入れ、生きていく―。

あきらめといっても絶望や投げ遣りなものではなく、
現状を受け入れてその上でさらに生きていこうという感じ。

主人公達の抱える不満や怒りやもやもやとした気持ち、
それらを受け入れる切なさや小さな喜びの描写がとてもリアルで、良かった。

一番好きな作品は「あんぱん」。
「来年70歳になる女性」の話なのだが、
年を取るにつれて女性性を失っていくことについての内容と、
「あんぱん」が見事な相乗効果を発揮していて、
切なくもほのかな明るい余韻の残る読後感といい、最も印象に残った。

著者は解説でこう書いている。

「あきらめることを静かに受け入れて、
生きる歓びというものは、その後にゆっくりと現れるものだ」。

まさにその通りのことを感じられた本だった。