【本】『隠し剣秋風抄』 藤沢周平著
2007.01.24(Wed)
「武士の一分が立てばそれでよい。」

隠し剣秋風抄 隠し剣秋風抄
藤沢 周平 (2004/06)
文藝春秋

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映画「武士の一分」の原作である『盲目剣谺返し』を含む、
9つの短篇が収められている。
どれも必殺の秘剣を身に付けている武士が主人公。
彼ら主人公達は秘剣の技を持っているとはいえ、
決して藩の大物などではなく、中の下の暮しを送る人々であり、
秘剣も使わざるを得なくなって初めて使う、というもの。

藩という組織の中で思うようにいかずに苦しみ、悩み、
時に嘲笑されるような主人公達が、
最後には秘剣で良くも悪くもけりをつける、というストーリーが、
中年男性に受けるところなのだろうなと推測。

確かに主人公達はとてもリアルで、
時代物でありながら古臭さを感じさせない点はとても魅力的。
主役の男達を描くことで、
著者の男という生き物に対する考え方が表れていて、
その辺りもカッコいい。
上手くいかない人生を生きねばならない男女の切なさも身にしみる。
短篇1つ1つも読み切りやすい長さでちょうどいい。

話題の『盲目剣谺返し』は、
思いもよらない波に飲み込まれた夫婦の悲哀と愛情を描いているが、
女性としてはあまり愉しい話ではなかった。

この本は娯楽的要素が強いと思う。
武士とは、人生とは何か、ということよりも、
コミカルな話が多いように感じたので。
他の作品の方が著者の魅力が出ているように思う。
でも取りあえず藤沢作品を読んでみたいという人には、
最初の1冊としていいかもしれない。